荒れ球リリーバー
息を切らせ辿り着いた試合終了後のドーム前。
先程まで本当にゲームが行われていたのかと言う程、静まり返りほとんど人通りのない中。
「いた…」と小さく呟いた私の視線の先には、こちらに背中を向けて佇む高身長男の姿があった。
別に、セイにわざわざ会いに来た訳じゃないんだから。
私はただ、あの身勝手な浮気男に文句を言いに来ただけ。
ガツンと一発お見舞いしてやるだけなんだから。
言い訳めいた言葉を自分の心に言い聞かせ、自宅から持ち出したある物を握り締めた。
大きく振り被りながら、右手に握るそれを思い切り放り投げた。
「公共の電波で、気持ち晒すなっつーの!!」
文句の言葉と共に奴に投げ付けたそれは、誠一郎の頭に見事命中した。
「いってぇ…」と言って頭頂部を右手で擦り、こちらを振り返る誠一郎。
「お前な、いくら軟球と言っても頭はヤバイって…」
不意に後ろから自分を強襲したそれを拾おうとする誠一郎の左手が止まった。