荒れ球リリーバー
「これ…まだ持ってたんだな…」

拾い上げたそれを見つめる幼馴染みは、小さく声を漏らした。

私にとっては大切な物でも、セイにとっては取るに足らない物なんだって思ってた。

「……覚えてたの?」

だから、誠一郎へ問い掛ける上擦った声。

「忘れるわけないだろ」

そう言って、誠一郎は左手でそれを投げ返して来た。

慌てて両手で受け取り再び握り締めたのは、家に立ち寄り持って来た汚れた古い軟式野球ボール。

「俺の初めてのウイニングボール」

セイの言う通り、これは中学生の誠一郎が炎天下の中で手に入れた人生初勝利の証。

「それと夢への第一球目」

夢と言う響きに思い出すのは、夕焼け空の下、子供同士で小指を結び付けてした約束だった。

私の頭の中でシンクロする。

目の前に立つ大人の誠一郎と幼い少年の誠一郎。

「俺の夢は、プロ野球選手になること」

『ぼく、おおきくなったら、ぜったいプロやきゅうせんしゅになるんだ』

「それと、もう1つ」

『それでね……』
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