荒れ球リリーバー






誠一郎の所属チームが、今年の球団抱負である《奪還》の二文字を見事リーグ優勝と日本一と言う最高の形で達成し、球界の全シーズンも無事に終了した。

そんな11月も半ばに差し掛かろうかと言うある日の朝。

私は、馴染みのコンビニに足を踏み入れた。

ラックに並ぶ誠一郎の所属する在京球団の優勝を報じる記事を横目に通り過ぎ、抹茶ラテを手に取った時。

「えぇっ!?これ、本当!?」

突然聞こえた悲鳴に近い声に思わず手を止め振り向くと、ラックの前に若い女性が3人程立っているのが視界に入った。

「ショックなんだけど!」とか「有り得ないし!」とか、思いの丈を口々に述べこちらに背を向ける彼女達は、どうやらラックに並ぶ雑誌か新聞等を見ているらしい。

すると、彼女達の中の一人がポツリと呟いた。

「でも悔しいけど、これ良い写真だよね」

「あー!それはわかる!」と頷く他の面々達。

「誠一郎めちゃくちゃ幸せそうな顔してるよねー」

言いたい事を全て言い終え満足したのか彼女達は、買い物をして店内から立ち去って行った。

抹茶ラテを手に取りレジで支払いを済ませ私もコンビニを後にしようとした時、彼女達が見ていたであろう新聞記事が目に入った。

そこに写るのは、白い歯の覗く照れ笑い顔の大好きな人といつもは白球を握る左手薬指に光るお揃いの指輪。

そして、大きな文字で書かれた新聞記事のタイトル。




《荒れ球リリーバー!幼なじみと結婚!!》




~Fin~


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