荒れ球リリーバー
不思議に思い、見つめていると。

『ウイニングボールって奴』

それが、勝利の証だと教えてくれる。

『志乃にやる』

『え?』

差し出されたボールと向けられた言葉に戸惑うけど。

『志乃のお陰で勝てた』

白い歯の覗く照れくさそうな大好きな笑顔で言われたから、素直に受け取る事にした。

『でさ…』

私がボールを手に取るのを見届けて、誠一郎は歯切れ悪く切り出す。

『ん?』

首を傾げる私に、奴は言い辛そうに問い掛けた。

『約束って…、なんだっけ?』

『へ?』

その疑問に、漏れるのは実に間の抜けた声。

信じ続けて、忘れられなくて、大切な約束。

『覚えてないの?』

幼稚な私は、困り顔で頷く誠一郎に腹が立つ。
< 21 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop