荒れ球リリーバー
製菓衛生師科勤務のパティシエである彼女は、私の眉間を指差し言った。

「シワ寄ってますよ?」

華子ちゃんの言葉にデスクに置かれた小さな鏡を見れば、確かに険しい表情をした自分が映る。

皺の寄った眉間を指でほぐした後。

「……ありがと」

一応、お礼を言う。

ご指摘に感謝しつつも引っ掛かるのは、今日も荒れてますね~という彼女の第一声。

今日もって、何よ!?

今日もって!

それじゃあ、まるで私が年がら年中荒れてる女みたいじゃない!

「あのね、華子ちゃん!」

そう思い、抗議しようと口を開いたのに。

「あっ。高岡さんだ」

ある場所を見つめる華子ちゃんの声に、呆気なく消された抗議の叫び。

華子ちゃんの視線を追えば、そこには職員室の一角に置かれた小さな液晶テレビ。

映し出されるのは、朝の情報番組。

スポーツニュースのコーナー。

インタビューに受け答えする一人の選手。

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