荒れ球リリーバー
ユリの始球式を生で見る事が出来て満足な私。

だけど、気掛かりな事がひとつ。

「高岡さん。ずっとベンチにいましたね~」

誠一郎は、芸能人の行う始球式に興味をあまり示さない。

普段は始球式を見ず、ベンチ裏に設置された投球練習場であるブルペンに居るらしい。

でも、今日はベンチで始球式を見て終了と同時に裏に引っ込んだ。



誠一郎は、リードや接戦の場面を中心に登板する。

大敗している時、大勝している時、疲労のある時等は、マウンドに上がらない。

だから、球場を訪れても必ずしも誠一郎の投球姿を見られる訳じゃない。

五対三で終えた六回の裏。

二点リードで挑む七回のマウンドには、誠一郎の名前がコールされる。

「ピッチャー。高岡。背番号63」

アナウンスと共に沸き起こる歓声。

ベンチ裏から現れ、マウンドへ走る誠一郎。

今日は、ツイてる。
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