荒れ球リリーバー
声を荒げ放った一言に、誠一郎は状況を把握したらしい。

「知ってたんだ…」

ポツリと呟かれたセイの言葉に、苛立ちを覚える。

「当然でしょ?」

今や週刊紙とワイドショーは、二人の噂で持ち切り。

知らない方が、不自然だ。

「志乃。ちゃんと説明する」

説明してもらう事なんて何もない。

返答しようと口を開いた時だった。

「誠一郎。ミーティング始めるぞ」

薄暗い通路の奥から、誠一郎を呼ぶチームメイトらしき声が聞こえた。

「今、行きます」

セイは、チームメイトの声に答えた後。

「俺もすぐ行くから、いつもの店にいて」

そう伝えて、私の反応を窺う事もなく通路の奥へ素早く走って行った。

「行くわけないでしょ…」

薄暗い通路の中、走り去って行く大きな背中に私は小さく呟いた。
< 61 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop