荒れ球リリーバー



―――数十分後。

私の姿は、都内の居酒屋にあった。

店主が熱狂的な野球ファンであり、店内は野球関連の番組がいつでも放映されている。

私と華子ちゃんの行き付けの店。

誠一郎の言ういつもの店。

普段は多くの野球ファンで賑わう店内だけど、試合に負けたせいか珍しく今日は誰もいない。

静かな空間を見渡し、行くわけないと言いつつ来てしまった自分を心底情けなく思う。

アルコールにそれ程強くない私は、烏龍茶を頼み誠一郎を待つ。

ガラッ

店内に響く引き戸の音。

出入り口に目を向けると、待ち人来たり。

高身長男が、暖簾をくぐり店に入って来た。

「待たせてごめん」

ボルドーのニットソー。黒のテーラードジャケット。ベージュのチノパン。

私服姿で登場した誠一郎。

「生中ひとつ」

生ビールを注文し、私の隣に座った。
< 62 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop