主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
息吹が障子ひとつ隔てた庭で雪男と立ち話をしていた。
声を聞きたくて障子に耳をぴったりつけていた主さまは、はっと我に返って部屋の中を行ったり来たりしてなんとか気を紛らそうとするが…悉く、失敗。
「息吹、俺も地主神様んとこついてく」
「駄目、私だけで行きたいの。父様は母様とお話するでしょ?母様、父様を独占しちゃってごめんなさい」
「!あ、あたしは別にっ。晴明なんか会わなくったってあたしは全然構わないよ!」
「ふむ、何気に傷ついたぞ。まあよい、しばしの間親子だけの時を楽しむことにしたのだからそっといておいておくれ」
――外では何やら自分抜きで楽しい会話が繰り広げられている。
ますますむっとした主さまは、わざと箪笥の引き出しを大きく開け閉めして大きな音を出した。
「…主さま…中に居るの?」
「ああ、ずっと籠城してるんだ。あんたからも何か言っておくれ」
ようやく自分の話題になり、わくわくしていると…
「ううん、私今日は地主神様にお会いしに来ただけだから。じゃあ行って来るね」
…がっくりきた主さまは、息吹の気配が遠ざかると障子を吹き飛ばしそうな勢いで開けて皆を驚かせた。
「…俺に会わずに帰るだと…?」
「ぬ、主さま落ち着いて下さいよ。今日はっていうことは明日はきっと主さまに会いに来ますから」
山姫に慰められてなんとか溜飲を下げた主さまは、にやにや笑っている晴明を思いきり睨みつけたが、晴明はどこ吹く風でそっぽを向いている。
「息吹の脚の怪我はまだ完治してはいない。どこのどいつのせいだと思っているのだろうねえ?」
「……」
「傷口に細かい砂利が詰まっていたし菌も全身を巡って高熱を出したのだ。おかげで私は毎日寝不足だったよ。まあ娘の寝顔を堪能できて幸せではあったが」
「………」
主さまが醸し出す殺気に山姫も雪男も恐ろしさのあまりその場から立ち去ったが、晴明は扇子で口元を隠してひそりと笑っていた。
「離縁…」
ぼそりと呟くと、主さまの眉が跳ね上がる。
本当は爆笑したかったのだが、なんとか平静を装った晴明は、絶句している主さまに再びにこりと笑いかけた。
「息吹の意志に任せることにしたのだが、私を怒らせぬ方がいい。さあ事情をとくと話してもらおうか」
主さまは喉を鳴らしてかくかく頷いた。
声を聞きたくて障子に耳をぴったりつけていた主さまは、はっと我に返って部屋の中を行ったり来たりしてなんとか気を紛らそうとするが…悉く、失敗。
「息吹、俺も地主神様んとこついてく」
「駄目、私だけで行きたいの。父様は母様とお話するでしょ?母様、父様を独占しちゃってごめんなさい」
「!あ、あたしは別にっ。晴明なんか会わなくったってあたしは全然構わないよ!」
「ふむ、何気に傷ついたぞ。まあよい、しばしの間親子だけの時を楽しむことにしたのだからそっといておいておくれ」
――外では何やら自分抜きで楽しい会話が繰り広げられている。
ますますむっとした主さまは、わざと箪笥の引き出しを大きく開け閉めして大きな音を出した。
「…主さま…中に居るの?」
「ああ、ずっと籠城してるんだ。あんたからも何か言っておくれ」
ようやく自分の話題になり、わくわくしていると…
「ううん、私今日は地主神様にお会いしに来ただけだから。じゃあ行って来るね」
…がっくりきた主さまは、息吹の気配が遠ざかると障子を吹き飛ばしそうな勢いで開けて皆を驚かせた。
「…俺に会わずに帰るだと…?」
「ぬ、主さま落ち着いて下さいよ。今日はっていうことは明日はきっと主さまに会いに来ますから」
山姫に慰められてなんとか溜飲を下げた主さまは、にやにや笑っている晴明を思いきり睨みつけたが、晴明はどこ吹く風でそっぽを向いている。
「息吹の脚の怪我はまだ完治してはいない。どこのどいつのせいだと思っているのだろうねえ?」
「……」
「傷口に細かい砂利が詰まっていたし菌も全身を巡って高熱を出したのだ。おかげで私は毎日寝不足だったよ。まあ娘の寝顔を堪能できて幸せではあったが」
「………」
主さまが醸し出す殺気に山姫も雪男も恐ろしさのあまりその場から立ち去ったが、晴明は扇子で口元を隠してひそりと笑っていた。
「離縁…」
ぼそりと呟くと、主さまの眉が跳ね上がる。
本当は爆笑したかったのだが、なんとか平静を装った晴明は、絶句している主さまに再びにこりと笑いかけた。
「息吹の意志に任せることにしたのだが、私を怒らせぬ方がいい。さあ事情をとくと話してもらおうか」
主さまは喉を鳴らしてかくかく頷いた。