主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
かつて主さまと銀が諍い合っていたという話は知っていたが、今の銀からは荒ぶっていた印象は全くない。
そして主さまだってたとえ冷たい男であっても全く笑わない男だったという印象も…全くない。
しばらくはのんびり滞在する、とお墨付きをもらった息吹は、わいのわいのと集まってくる百鬼たちに手を振ったり応えたりしつつ、2人の過去話をぽつぽつと潭月から聞いていた。
「抑えられないほどの大きな戦いだった。銀はひとり幽玄町に乗り込んで十六夜に戦いを挑んだし、町を乗っ取ろうとしていたんだが、十六夜には適わなかった」
「へえ…。銀さんはこの町を乗っ取って何をしようとしてたのかな」
「単なる気まぐれだ。あの頃俺はまだ若くて、幅を利かせる十六夜が鼻について懲らしめてやろうと思っていただけだ」
…銀は今でも十分若く見える。
優しくて甘い印象の顔立ちに真っ白な髪と耳と尻尾――
主さまが居なければ今でも銀を撫で回していたいほどなのだが、そこはぐっと堪えて猫又を撫で回す。
「そろそろ行くぞ」
主さまの号令であちこちに散らばっていた百鬼たちが集結して隊列になると、息吹は主さまに駆け寄って袖をくいくいと引っ張った。
「…なんだ」
「早く帰って来てね。怪我しちゃ駄目だよ」
「……わかった」
百鬼たちがにやにやする中、主さまが先頭で空を駆け上がって吸い込まれていく。
息吹は姿が見えなくなるまで見送ると、縁側で団子を頬張っていた潭月と周の間に挟まって座った。
「私、赤ちゃんは父様のお屋敷で産もうと思ってるんですけど…賛成してくれますか?」
「いやなに、俺たちは爺婆になるだけで口出しをするつもりはない。それに未だに晴明が娘を恋しがっていると風の噂で聞いたからな、実家で産むといいだろう」
「ほんとですかっ?わあ、良かった!まだまだ先の話だけど、男の子だったら主さまも隠居できるし、楽しみっ!」
笑顔を絶やさずにこにこしている息吹に癒された主さま一家は、息吹があまりじっとせずにちょこまか動き回ることに若干不安を覚えていた。
妊娠が分かればそれこそ最初はじっとしていなければいけないのに、息吹はまるで逆だ。
「これは十六夜が心配するわけだな」
潭月は呆れつつ、ここに住んでいた頃のように縁側に寝転んで様変わりした庭を眺めながら、主さまの心境の変化をも楽しんだ。
そして主さまだってたとえ冷たい男であっても全く笑わない男だったという印象も…全くない。
しばらくはのんびり滞在する、とお墨付きをもらった息吹は、わいのわいのと集まってくる百鬼たちに手を振ったり応えたりしつつ、2人の過去話をぽつぽつと潭月から聞いていた。
「抑えられないほどの大きな戦いだった。銀はひとり幽玄町に乗り込んで十六夜に戦いを挑んだし、町を乗っ取ろうとしていたんだが、十六夜には適わなかった」
「へえ…。銀さんはこの町を乗っ取って何をしようとしてたのかな」
「単なる気まぐれだ。あの頃俺はまだ若くて、幅を利かせる十六夜が鼻について懲らしめてやろうと思っていただけだ」
…銀は今でも十分若く見える。
優しくて甘い印象の顔立ちに真っ白な髪と耳と尻尾――
主さまが居なければ今でも銀を撫で回していたいほどなのだが、そこはぐっと堪えて猫又を撫で回す。
「そろそろ行くぞ」
主さまの号令であちこちに散らばっていた百鬼たちが集結して隊列になると、息吹は主さまに駆け寄って袖をくいくいと引っ張った。
「…なんだ」
「早く帰って来てね。怪我しちゃ駄目だよ」
「……わかった」
百鬼たちがにやにやする中、主さまが先頭で空を駆け上がって吸い込まれていく。
息吹は姿が見えなくなるまで見送ると、縁側で団子を頬張っていた潭月と周の間に挟まって座った。
「私、赤ちゃんは父様のお屋敷で産もうと思ってるんですけど…賛成してくれますか?」
「いやなに、俺たちは爺婆になるだけで口出しをするつもりはない。それに未だに晴明が娘を恋しがっていると風の噂で聞いたからな、実家で産むといいだろう」
「ほんとですかっ?わあ、良かった!まだまだ先の話だけど、男の子だったら主さまも隠居できるし、楽しみっ!」
笑顔を絶やさずにこにこしている息吹に癒された主さま一家は、息吹があまりじっとせずにちょこまか動き回ることに若干不安を覚えていた。
妊娠が分かればそれこそ最初はじっとしていなければいけないのに、息吹はまるで逆だ。
「これは十六夜が心配するわけだな」
潭月は呆れつつ、ここに住んでいた頃のように縁側に寝転んで様変わりした庭を眺めながら、主さまの心境の変化をも楽しんだ。