カラフル
気を張っていたせいか、あたしはその台詞を聞いた途端、息を大きく吐くくらい疲労感でいっぱいになった。
「これが本当の仕事なのか」と思うほど、今のあたしは「やり遂げた」という気持ちでいる。
橘さんに褒められて、あたしは満面の笑みになった。
「佐奈ちゃん!」
帰り支度をするために更衣室へ向かおうとしていたあたしは、突然、呼びかけてくる矢野ユウキの声に驚いた。
今、“佐奈ちゃん”って言った?
少し前まで険悪の仲だった相手から名前で呼ばれるのは、ちょっと心地悪い。
振り返ると、彼はにんまりと口元を緩めながら、優しい表情で見せてくる。
「やるじゃん。次のロケ、楽しみにしとくよ」
彼はそう囁いた後、フッと向こうをむいてスタッフのところへ行く。
なぜか、あたしはその後姿を目で追ってしまった。
テストで100点を取って、親からを褒められたかのような嬉しさが込み上げてくる。
「佐奈ちゃん、どうしたの?」
ぼんやりしているあたしに、首を傾げる橘さん。
「……あ、何でもないです」
我に返ったあたしは、少し火照っていた頬を冷ますかのように、早足でその場を後にした。