カラフル

その後のあたしは、カメラに向かってめいっぱい微笑んだ。

モデルの仕事に慣れていない、2年前の自分に戻ったみたいな感覚。

撮られている間、あたしは隣にいる矢野ユウキをライバル視していたと思う。

それは悪い意味ではなく、良い意味で。

彼の人気はきっと容姿だけじゃない、と見ていてわかったから。

女の子との撮りが慣れているのか、それとも女性経験が豊富なのか、理由はわからないけれど、「ボーイフレンド」という役を演じるのがとても上手な人。

休憩前の彼とは別人なんじゃないかと思わせるほど、今の彼の表情はとても爽やかで、夏を感じさせてくる。

互いの顔を見て微笑みあうシーンを撮るときは、演技だとわかっていても思わずドキドキしてしまう。

今までの撮影では感じたことのない、レベルの高さ。

彼と肩を並べていると、自然に「あたしも負けられない」という気持ちにさせてくれる。

あたしはカメラマンが求める以上のものを出そうと、今の自分ができることを全て出し切った。

やればやるほど、周りの空気も柔らかくなっていく。

「さっきとは全然違うね」と小声で話すスタッフの声も耳に入ってくる。

本当に、すごく気持ちが良かった。

「はい、お疲れ様!」

最後の撮影が終わったとき、橘さんはにこやかに笑いながら軽く拍手をする。
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