カラフル

「本当に辞めるんですか?」

上の階で待っていたあたしは、編集長の部屋から出てきた彼に、唐突な質問を投げる。

「誰から聞いたの?」と言うかのような表情をして、驚いている彼。

「……ここで話すのもアレだから、移動しよう」

彼はそう言って、スタスタとこの場を去っていく。

眉間にしわを寄せたままのあたしは、下唇を強く噛みながら後を追った。


「いっぱい悩んで決めたことなんだ」

ビルの屋上に着いてから、少し間を置いて彼は話し始める。

「うちの親、緩くてさ。『いつ辞めた方がいい?』って相談したときも、『自分で決めなさい』としか言わなくて。……本当はすっげぇ心配してるくせに」

鉄筋の手すりに両手を置いて、景色を眺める彼の瞳はすごく切なくて、「こんな顔もするのか……」と胸が苦しくなった。

「好きなことをさせてもらってたから、受験も全力でやろうと思ったんだ」

そう言い切る彼は、清々しい笑顔をあたしに見せてくる。
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