カラフル
返事を待っているのか、ナナはずっとあたしを見上げたまま。
熱で、耳が麻痺したみたいだ。
さっきまで騒がしく思っていた雑音は一瞬で消えて、自分の心臓の弾む音だけが聞こえてくる。
「違うの?」
返事をしないあたしに痺れを切らしたナナは、もう一度、問いかけてくる。
観念したあたしは、うつむいて首を横に振る。
少し前から、本当は気づいてたよ。
ナナのことを意識している自分に。
だけど、自分が好きなのは先輩だと言い聞かせて、ナナを見ないようにしていたの。
軽い気持ちに傷つきたくなかったから。
そっと顔を上げるあたしは、にんまり微笑んだ表情を見て、顔だけじゃなく全身に熱が広がるのを感じた。
ナナは階段を一段飛ばしで駆け上がり、あたしの前に立つ。
「何? ちゃんと言ってくんなきゃわかんない」