カラフル
沈黙が続くにつれ、血迷っている自分が浮き彫りになっていた。
「郁ー?」
「どこ行ったんだろう?」
しばらくして、あたしを探す朝香と佐奈の声が、遠くから聞こえてくる。
ここから逃げるいい理由が出来た、と思った。
「ごめん。呼んでるから、行くね」
そう言って、ナナに背を向けるあたし。
早く、ここから離れたい。
あたしは、ずるい自分を揉み消そうと必死だった。
だけど、ナナは「なぁ?」と言って、また呼び止めてくる。
「それってさ、俺のことを好きってことじゃないの?」
階段の手すりに手を置いたまま、立ち止まるあたしに、ナナは首を傾げて聞いてくる。
自分の顔が真っ赤になったのがわかった。
耳まで熱くて、あたしは口を開けたまま、何も言い返せなくなる。