カラフル

沈黙が続くにつれ、血迷っている自分が浮き彫りになっていた。

「郁ー?」

「どこ行ったんだろう?」

しばらくして、あたしを探す朝香と佐奈の声が、遠くから聞こえてくる。

ここから逃げるいい理由が出来た、と思った。

「ごめん。呼んでるから、行くね」

そう言って、ナナに背を向けるあたし。

早く、ここから離れたい。

あたしは、ずるい自分を揉み消そうと必死だった。

だけど、ナナは「なぁ?」と言って、また呼び止めてくる。

「それってさ、俺のことを好きってことじゃないの?」

階段の手すりに手を置いたまま、立ち止まるあたしに、ナナは首を傾げて聞いてくる。

自分の顔が真っ赤になったのがわかった。

耳まで熱くて、あたしは口を開けたまま、何も言い返せなくなる。
< 51 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop