カラフル
「洋介くんの練習、今日は見に行かないの?」
帰ろうとするあたしに、声をかけてくる佐奈。
見に行けるわけがない。
あの休憩時間から、彼とは一言も口を利いていないし、近づいてきても避けていたから。
「佐奈、あたしに何か言うことない?」
見に行きたいのは、自分じゃないの?
何も気づいていないと思って、あたしのことを馬鹿にしてるんでしょ。
もう、あたしは完全に、佐奈のことを信じていなかった。
好きなら好きだと言ってほしかった。
こそこそ手紙を渡すなんて、佐奈の神経を疑ってしまう。
友達だと思ってたのに、こんな形で裏切るなんて。