カラフル
思い出そうとするかのように、視線を上にして考えている佐奈。
「手紙」という言葉で、いつのことを言っているのか、すぐにわかるはずなのに。
本当にどこまでも白々しいな、と思った。
「……あぁ、あの日ね。見てたんだ?」
黙って返事を待っていると、佐奈は何度か頷きながら、やっと思い出したふりをする。
「見てたんだ?」という返事に、カチンときた。
「何、笑ってんの? 人のことを馬鹿にするのも、いい加減にしなよ」
腹を立てるあたしは、眉間にしわを寄せ、クスクス笑う彼女にそう言った。
あたしがどれだけ洋介のことを好きか、知っているくせに。
あの場面を見たときのあたしの気持ち、佐奈にはわからないんだね。