指先で紡ぐ月影歌
「…空は、青いな」
深く息を吐いて、大きな木の根本にごろりと体を倒す。
大木の先から落ちる影はゆらゆらと風に誘われて。俺の視界を行ったり来たり。
さわさわと音色を奏でながら惑わす舞いのように揺れている。
横には飲みかけの酒と二つの猪口。
何となく一つだけでは寂しくて、意味もなく持ち出してしまった。
今は傍らで酒を傾ける人もいないというのに。
木漏れ日は、今日も変わらず辺り一面を照らしている。
太陽の光を浴びる緑は、太陽の光を背負う青は数年前のあの頃と同じ。
全くその色を変えてはいない。
それなのにそんな草木を踏み潰し空を仰ぐ余裕もなく、人はやたらと駆け足で文明開化の音を鳴らす。