10年後も…〜song for you〜
「どうしたの?」
その音に、お母さんが部屋を覗きに来た。
部屋は荷物も無くなり綺麗に片付けられていた。
お母さんもびっくりした顔をして、部屋の隅々を見渡している。
私は部屋のベッドの脇に置かれた、おられた紙と封筒を見つけて、紙を手に取った。
手が震える。
おられた紙を震えながらゆっくりと広げた。
そこには、見慣れた健の文字が並んでいた。
"突然ですみません。お世話になりました。色々とありがとうございました"
置き手紙だった。
たった二行の短い言葉。
私はその文字を見ると、両手で口を抑えた。
手紙がヒラヒラと落ちた。
その手紙をお母さんは拾って読んだ後、封筒を手に取った。
「うそ、やだ…」
封筒には、一万円のお札が何枚か入っていた。