10年後も…〜song for you〜


「あ、起こしちゃった?」


目を開けると、真琴が化粧台の上で何やら書き物をしていた。


「帰ってきてたんだ。ごめん。すげぇ寝てたわ」

「ううん。健、身体の調子大丈夫?」

俺は起き上がって、真琴の頭をポンと軽く叩いた。

「沖縄に来てまで、心配し過ぎなんだよ。俺は大丈夫だって。つーか何してんの?」


化粧台に広がった紙を覗くと、真琴はさっと腕でその紙を隠した。

「なんでもないよー。仕事の書類見てただけ」

「なんだよー。つーか、今日はどうだったんだ?」

「今日はこれからのスケジュールの打ち合わせだけだったから早く終わったの。明日から観光地巡りするの」


打ち合わせの紙を見ると一週間ビッシリとしたスケジュールだった。


「ハードだな。お前こそ大丈夫かよ?」


「やるしかないよ。でも…」

「ん?」


真琴が悲しい表情を浮かべた。


「せっかく、沖縄まで来たのに、健と一緒に過ごせない…」

「ばーか。気にすんな。仕事で来てんだから仕方ねぇよ。夜は一緒に過ごせるだろ?俺はそれだけで充分」

俺はそう言って、真琴の額を小突いた。



そのことは、自分自身にも言い聞かせた言葉だった。

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