カノン
「…ここ渡って、
向こう側に今日の お店が……。
あ、もう お店の前に2人 来てる!
ひーちゃん、
あそこの2人組…見える?
あの女の子の方が、ネイルサロンの店長で…
あっちの、男の子が…バンドマン。
…あれ?
店長の後輩の子も来てる、のかな…」
祐貴が指している方向には確かに、
ネイルサロンやってそうな小綺麗な感じの お姉さんと、ヴィジュアル系バンドやってそうな…男の子。
それに少し離れた所に、
これまた お姉さんと同系統の少し派手目な女性が、携帯を耳に当てながら、
きょろきょろ と、辺りを見回していた。
「…これは ひょっとして、
東京に出て来る従姉妹の子を、探してるパターンかな?」
信号が変わるまでの間、3人を観察していた祐貴が、
暢気に そう言った。
「……そんな感じ、だね」
今日のメンバーを目の当たりにしたら、
忘れ掛けていた憂鬱な気持ちが、また押し寄せて来た。
―…やっぱ、行きたくねーなぁ…―
…改めて そんな事を考えたけど、
当然 時間が止まってくれる筈も なく。
変わって欲しくなかった信号は容赦なく青に変わって…、
それを合図に、祐貴は俺を思いっ切り、引っ張った。