恋の駆け引き
車の中での会話は、お互いを知るための会話がほとんどだった。



休みはどのように過ごしているかとか、よく行く場所とかなどだ。



一通り聞き終わると、会話が途切れ途切れになり、沈黙の時間も増えていった。



そして、ただでさえ何を話そうか困っているのに、案の定、渋滞に巻き込まれ、一段と会話が減り、外を見ている時間が増えた。



会話の中で、私がよく映画を観に行くことを聞いた遠藤は、


「ここ何年も映画館で映画なんか観てないけど、一人じゃないなら観に行きたいな」


と独り言のように言っていた。



それを私は、聞こえない振りをした。



今度は、映画を観に行こうなどと考えていたのかもしれない。
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