叫びたいのは、大好きな君への想いだけ。


「あの子の話を聞いているとね、優花が自殺する少し前からの二年間……記憶が全然ないの」



優花ちゃんが自殺する少し前からの二年間。


ということは……。



「俺との記憶はまったくないってことですか?」


「……そう、なるわね」



相沢と出会った瞬間から、今まで。


……すごく濃い時間を過ごして来た。


曲がり角を行った俺のところに泣き顔の君が飛んで来て、
迷っていた俺を道案内してくれて、
声が出ないことがわかったけど、
それでも笑顔がキラキラしている可愛い君に恋をした。


再会した君の暗い顔を見て、もう一度その笑顔が見たいと願った。


ふたりで二回も授業をサボった。
口パクで、手で、背中で、ノートで、気持ちをゆっくり繋いだ。


正直、楽しいことだけではなかったと思う。


相沢は優花ちゃんのことで苦しんでいたし辛い時間だったかもしれない。



ーーでも、それでも。



その時間は俺の中ではすっげぇ大切な宝物だった。


あんなに輝いていた時間が相沢の中にはないんだ。


< 262 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop