SトロベリージャM
祭りが終わる10分前、ショーケースに残るのは、大量に準備したストロベリージャムの内、1瓶だけだった。


(今年は、1番の売れ行きだったな。)


実野里は、ウハウハモードで店内の片づけをし始めた。


それは、儲けから浮かんだ、いやらしいウハウハではなく、たくさんの人がMINORIのジャムを愛してくれているという幸せな気持ちと達成感から溢れたウハウハだった。


5時になり、札をCLOSEに変えた。


暫くして、部屋に戻ろうと台所を出ようとしたとき、ドアを叩く音がした。


(閉店してるのに、玄関から来ないなんて珍しい。誰だろう?)


実野里は、初めての来客だと勘付いた。


店の入り口は、家の正面にあって分かりやすいが、玄関は裏にあるので見つけづらいのだ。


「は・・は~い!今開けま~す。」


(新人の宅急便やさんかな?)


そう自分に言い聞かせながらも、鍵を開ける掌には冷や汗が滲み出ていた。
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