SトロベリージャM
わたしは、どんな手を使ったのかを、声に出して聞くことができなかった。


ダイが、悲痛に歪んだ顔をしていたからだ。


「俺の母も、実野里の母さんも、この森で生まれ育ったのは知ってるよな?」


わたしは、こくりと頷いた。


そう、2人は幼馴染で、ずっとこの自然の中で住んでいたのだ。


「あいつは、俺の妻にならないと、この森を潰すと母に言ったんだ。故郷を愛していた母は、従うしかなかった。そして、母と俺の生活を保障し、俺を後継ぎにしてやるとほくそ笑んだんだ。何も反抗できなかった。俺だって故郷を愛していたから。」


わたしは、涙をこらえることができなかった。


だって、わたしたちが平和にのんびり暮らしてこれたのは、2人のおかげだったんだから。


誰も知らない残酷な真実だった。


ダイがわたしの涙を、親指で拭ってくれた。


「俺、本当は実野里と同じ大学に行きたかった。小学校でも中学校でも、田舎訛りの言葉使いが抜けないせいでからかわれたし、都会の常識を知らないせいで仲間外れにされたりした。だけど、自然が好きだったんだ。実野里との思い出も含めて。だが、志望校は父の言いなりだった。社長の後継ぎなんだ、大学なんて自分で決められるはずかなかった。」
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