SトロベリージャM
そして、今に至る。


今日は、面接本番の日。


実野里は、持ち物をチェックをしながら、鞄の中に入れていった。


数年ぶりに、黒のスーツを着た自分の姿を鏡で見ていると笑えてくる。


特に都会で露出したくない実野里は、首元まである少しフリルが入った襟のブラウスを着て、下はズボン、長い黒髪はベージュのシュシュでポニーテールにしていた。


うなじだけが、唯一の露出だ。


(やっぱり、顔だけは都会っぽくならないな。しかも、童顔だし。)


実野里は5歳くらいは若く見えるとみんなに言われてきた。


いつも、日焼け止めファンデーションに、無添加の桜色チークとヌーディーピンクのリップカラーをつけるだけのシンプルなメイクのせいもあるかもしれない。


だが、大半の原因は、顔の造りだ。


大きな茶色の瞳に、隙間なく生え揃った長いまつ毛、小さめの高い鼻とぽってりした唇、そして色白の肌。


物語に出てくる妖精のような、一度見たら忘れられないような、個性的な顔つきをしている。


そして、自分では気づいていない必殺技とも言える、あの甘い色気。


この年になっても、レースの付いた花柄のワンピースを着ていることに、皆が頷けるほどだ。





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