SトロベリージャM
広大な駐車場には、ぎっしりと車が並んでいた。


飛行機に乗って、空から見下ろしたら、色とりどりのタイルのように見えるだろう。


空いている場所に車を停め、アスファルトの上に一歩踏み出した。


ひれ伏した車を横目に、上下左右に拡大しすぎた妖怪を見据えた。


(エデック・・。)


実野里は、まるで、妖怪からお姫様を救いにきた王子のようだ。



たまに、都会へ買い物に行って、アスファルトの上を歩く度に思うことがある。


そして、今もそう思う。


(命を生み出す土の母は、人間の勝手によって、子どもを殺され、さらに味気のないグレーの物体を流し込まれる。どんなに悲しいだろう。どんなに苦しいだろう。)



そして、実野里は自分が我がままだと思った。


(わたしも都会を利用しているのに、自分の居場所は絶対に譲らないと言う。埋め立てられる前に存在した自然の命も、住んでいた人の悲痛な思いも踏んで歩いているのに・・。)
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