SトロベリージャM
(わたし、この人にお尻触られてる・・??)


そう気付いたときにはもう、その人物を見上げていた。


切れ長の目に、黒い瞳、スッと伸びた長いまつ毛。


筋が通った高い鼻に、キリッとした薄めの唇。


茶色の髪は、見事にワックスで無造作に逆立てられていた。


目が合った瞬間、実野里は息が止まってしまうかと思った。


(う・・うわぁ・・この人、すごく綺麗。)


男性を見て顔が熱くなる感覚は、初めてだった。


ふと、真っ赤になった大地の顔を思い出した。


(大地って、わたしを見て興奮していたんだ。やだっ、わたしったら・・こんなキャラじゃないし!)


頭の中では、様々な感情のオンパレードが繰り広げられている。


(それどころじゃない!わたしセクハラされてるのよ!)


やっと我に返ったとき、その男は実野里を見下しながら言った。


「梶谷矢実野里さん、やっぱり隙だらけ。」


今度は、実野里の顔が怒りで赤くなった。


「ちょ・・ちょっと、何でわたしのフルネーム知ってるの?しかも、やっぱりってどういう意味よ?」


男はセクハラを止め、その代わりに顔を近づけてきた。


「田舎から来たんでしょ?会社の子は、わざとに隙を作って、俺を誘おうとする。だけど、君は天然の隙の持ち主のようだ。」





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