SトロベリージャM
実野里も負けじと言い返した。


「まともな隙がある方がましです。これ以上変なことしたら、助けを呼びますから。」


吐息がかかるほどの至近距離に、実野里の心臓は爆発寸前だ。


「ドキドキしてる?単純なところは同じのようだね。無駄な抵抗はしない方がいいよ。俺に逆らったら、面接、100%落ちちゃうから。」


(この人・・!?きっと、荒井大地だ!!)


実野里は、唇を噛み締めながら、偽物大地を睨んだ。


(何でよりによって同じ名前なの?雲泥の差だわ。)


あと少しで、12階に着く。


扉が開く前、彼は真正面にあった顔を実野里の耳元に移動させて囁いた。


「合格させてあげる。」


扉が開くと、彼は何事もなかったかのように、颯爽と出ていった。


怒りで顔が熱かったのに、更に驚きと興奮が加わって、熱がヒートアップしてきた。


(何で、偽物大地に真っ赤な顔しなくちゃいけないの!?本物の大地は、もっとイケメンで性格も良いんだからね!)


余計なことを考えていたせいで、危うく乗り越すところだった。


ヒールをカツンと鳴らして、一歩を踏み出した。
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