嘘付きな使用人
「今までにも雇ったんだが男なら暴力で辞めて女なら…まぁ関係を持ってしまって仕事をしなくなって首になり…。
とまぁそんな感じなんだ。」

「ほおほお。」

「そこで君に権限を与えておく。
君は嫌なら彼らの命令は聞かなくていい。
君に正式に命令出来て首に出来るのは僕だけ。
使用人だが彼らとは対等。
だから敬語じゃなくて良いし、暴言暴力も必要なら構わない。
やって貰えないかい?」

少女は頷く。
理解してるのかは疑問だが。

「休みは毎週日曜日と盆と年末年始。
給料は毎月10日。
住み込みだから手渡しで良い?
それとも振り込む?」

「あっ手渡しで。」

あとは…と呟くと小野寺は机に向かい引き出しを漁る。

「清水さん、多分15歳か16歳だよね。」

「いや今日から18歳です。」

「これは仕事とは関係ないから。」

「…多分今年16になります。」

小野寺は頷くと少女の前に書類を置いた。

「清水さん、うちに通いなさい。」

「…はぁ。」

少女の眉間に皺が寄る。

「今の世の中、義務教育さえ受けてない状態じゃどこも雇ってくれないよ。
せめて高校は卒業しなさい。
君が希望すれば幸いうちはエスカレーターだから大学も行ける。
こちらが年齢条件引き下げて雇う代わりにきちんと通う事。」

少女は心底嫌そうだが渋々了承を告げた。
小野寺に書類にサインするよう促され嫌々ペンを手に取る。

「ほう…意外と綺麗な字を書くんだね。
どこで覚えたんだい?」

少女の手が一瞬止まる。
だがまたすぐに手を動かし独学…と返した。
そこには明らかにこれ以上触れないでくれと言う拒絶があった。

「…よし、書けたね。
幸い今は春休みだ。
中学までの勉強を仕事の合間に出来る限りしておきなさい。
明日から早速働いて欲しいんだけど大丈夫?」

「大丈夫っす。」

「荷物はどうしようか?」

「そんなにないんで自分で運べますよー。」

「じゃあ明日からよろしくね。
清水さん。」

小野寺の言葉を背中に手をヒラヒラ振りながら少女は桜ノ宮高校を後にしたのだった。
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