神龍と風の舞姫
海斗があいつら、と呼ぶのは彼らしかいない

ふうと息をつきながら気を引き締める

ふわっと隣で空気が動いて海斗が歩を進める

離れるなって言っておいて先に行かないでよ、とその後を追う

そっと振り返った門にもその下の階段にもまったく人の気配を感じなかった


高い高い天井は思わず見上げてしまうほどで、けれどそのところどころには蜘蛛の巣が巣作っていた

雰囲気もシンとしていて、人がいないのがよくわかる

カツン、カツン、と海斗としるふの足音だけが嫌に響く

まるで一度来たことのあるように迷わず進んでいく海斗の背に、時々周囲を見回しながらついて行く

王宮には普通、いらないほどの人がいる

メイドや警備の兵士がそのほとんどだが、今この城からはその物音すらしない

不気味という言葉が一番似合っている

「ねえ、」

前を行く海斗の広い背に問いかける

かすかに海斗が応じる気配を感じてからしるふは言葉をつなぐ

「もし、ここに招かれざる客がいたとして、その人たちを追い払ったら子の国は元に戻るの?」

元の活気のある巨人族の国に戻るのだろうか

「国王が死んでいなければ、な」

死ぬというのは、きっと生命だけではなく精神の意味も含まれているのだろう


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