神龍と風の舞姫
疲れた時は浮いて海斗の肩にしがみついて移動する

風に乗っているから海斗が負担に感じることはない

それが風使い、しるふの力だ

器の大きいしるふは普通の人よりも風をいろいろな方法で操れる

風の声も聞けない風使いだっている

しるふは風使いの中ではトップクラスの実力を持つ

本人戦いを好まないし、明るいからそんな雰囲気はまったくしないのだけれど

海斗は森の中を進む

木の根を飛び越えて見えてきたのは小さな滝のある湖

そこに一人の女の子がいるのに気が付いた

「…?」

湖の近くまで来て森にはあり得ない気配を感じたしるふは、海斗の肩をつかむ

でもその気配を放っているのが女の子だとしると眉を寄せる

「…海斗…あの子…」

隣にいる海斗を見る

海斗もしるふを一瞥すると小さく頷く

「っ!…海斗!!」

次の瞬間、海斗が手に炎を宿したことにしるふは驚きの声を上げる

海斗の炎は猛火だ

あれを浴びたらひとたまりもない

体だけではなく魂までもが焼き尽くされる

残るのは風に乗るほど軽い灰だけだ

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