神龍と風の舞姫
「どこでもいいよ」

優しく吹く風を感じつつ、海斗は瞳を閉じる

「もー、いっつもそう。…じゃあ、…海斗?」

寒いの嫌だから南に行こうよと提案しかけたしるふは、海斗が突然起き上がったことに気が付いた

海斗は何か見えないものを見るように空中を睨み付けている

「…しるふ、行くぞ」

「…え?あ、ちょっと!…待ってよ!!」

短い言葉とともに町はずれに向かって走り出した海斗を、しるふは慌てて追う

大会が開かれていた会場のざわめきが遠のく

石畳の街中を走り抜け、国と森を仕切る塀を軽々と飛び越える

街中は中心部から離れれば離れるほど人気がなかった

きっとみんなお祭りで出払っているのだろう

そんなことを考えつつ、目的地が分かっているように迷わず走る海斗の背中を追いかける

「…もうっ」

人気がなくなって、もう大丈夫だと思ったしるふはふわりを体を浮かす

そのまま風に乗って海斗に追いつく

「海斗、どうしたっていうのよ?」

地から足が浮いているしるふはまるで飛んでいるようだ(実際は浮いているだけ)

風使いのしるふにとって風に乗って体を浮かすことはたやすい

そのまま風を操れば移動もできる

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