神龍と風の舞姫
魔力の残り香は、時間がたてばたつほど無くなっていく

それをこうして感じ取れるということは、ついこの間までここに海斗がいたということだ

そっと視線を動かした二人の視界には、小さく盛り上がった土がある

その上には時頼風に揺れる小さなかわいらしい花が置いてあった

感じからして多分、墓

誰の

今、ルノアたちが調べている失踪事件

いろいろ調べてここに行きついたということは、ここにもそれ関連の何かがあったのだ

そして海斗が魔力を使い、目の前に墓がある

花が添えられているということは、海斗が、あるいは違う誰かが、弔いの意を示したということだ

魔力を使わなければならなかったけれど、弔いの意を示す相手

失踪してきっと世界の闇に飲まれたであろう少年少女達

あるいは、その残像

「…思っていたほど時間はなさそうだな」

ユザの小さなつぶやきに、深刻な顔をしつつルノアが頷く

「戻ろう。信次様にお伝えせねば」

ああ

ユザの頷きとともに二人で同時に踵を返す

ふわっと吹いた風に、二輪の華が小さく揺れた
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