神龍と風の舞姫
「舞姫は苦労するな。こんな力が強いだけの男についてきて」

笑い声を響かせながら羊の声が地を這う

「やっぱりそう思う?まあ、身の安全は確保できる…のかな?」

海斗ともに居ると理不尽に狙われることも少なくないから安全か否かはお相子と言ったところだろうか

さらさらと流れる風が心地よく吹いていて行く

「それはそうと、海斗」

羊の言葉に海斗が視線だけを投げかける

澄んだ青い瞳が海を思わせる

「隣の王国だが、最近思わしくないようでな。不穏な空気が流れているような気がする」

もし行くのなら気をつけろ

「この森に支障はないのか」

自然豊かに生い茂る木々が後代に広がるこの森は、たくさんの動物たちが生活している

森の守り神である彼もそろそろ高齢だ

それに守り神に戦う力はあまりない

国がどうなろうと知ったこっちゃないが、慣れ親しんだこの森に被害が及ぶのは頂けない

「今のところ、と言っておこうか。今はまだここに手を出してくる気配はないが、後々どうなるかはわからん」

「たしか巨人たちの国だったな」

「ああ、長いこと世話になっていたが、最近はちっこい人が出入りしているように思う」

もちろん旅人ではなく
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