竜王様のお約束
『そんな拗ねた表情で、男心と言われても・・・。』
と、コクリュウは絶句したまま、戸惑いを隠せない。


ハクリュウのこんな覇気のない姿を見てしまった事は、コクリュウにとって、実は歓迎すべき事ではなかった。


願わくばハクリュウ王陛下には、誰の者にもなってほしくはなかったし、弱音も見せてほしくはなかった・・・というのがコクリュウの本音である。


「ほら、兄上のあまりの変貌ぶりを見て、コクリュウが押し黙ってしまいましたよ。
私だって気持ちを切り替えるまでに、かなり葛藤したんです。
兄上も、その自覚を持って下さいね。」


「ふっ・・・変貌と言うか。
変わったという、自覚を持てと?
むしろこちらが、本来の我なのだがな。
この先、天界の事のみを思い、何もかもを冷酷に割り切って、孤独でいる事には耐えられぬ。
・・・皆には悪いが、もう、あの頃の我に戻る気はないのだ。」


ハクリュウは静かにそう言うと、隣に佇むヤヨイの手にそっと触れた。


コウリュウはその妖艶な顔に苦い笑みを浮かべて、軽くため息を吐く。
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