竜王様のお約束
コウリュウは、少しその妖艶な瞳を細めて、静かに言う。


「元の、元は、誰のせいですか?
そもそも兄上がここにお留まり下さって居れば、何も問題なかったでしょう。」


「だから・・・それは・・・説明致したではないか。
ヤヨイを皆に分け与えたくないのだ。
ヤヨイは我だけのモノぞ。
竜王でいる限り、生気を分け与えるという役目を負わねばならぬ。
それ故、我はここに居る訳にはいかぬのだ。
何度も言わせるでないわ。」


「コウリュウさん、ごめんなさい。」


「いや、ヤヨイが謝る事ではないよ。
これは、私と兄上の問題なんだ。」


その時コクリュウが、おもむろに口を挟んで来た。


「竜王陛下が人間界に行かれた本当の理由とは、私達に生気を分け与えたくないから、なのですか?」


「誤解するでない!
我は生気を分け与える事が、嫌なのではない。
‘ヤヨイ’の生気を分け与えるのが嫌なのだ。
我はもう、ヤヨイ以外のモノの生気を、取り込みたくはない故な。
この我の切ない男心が、そなたに分かるか?」


コクリュウは、黙ってしまった。
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