竜王様のお約束
強い風が一瞬にして天界中を揺らし、神秘的で透明感のある黒い光がオーロラのようないつもの光景を覆い隠す。ポツリポツリと冷たいものが光から滴り、それは温かい生気として民たちを潤した。天界中が優しい黒の光を分け与えられて、同じ想いを共有する。


「「「これが新竜王の生気」」」


「「「なんと真っ直ぐな想いなんだ」」」


「「「まだまだ弱々しいが十分満たされる」」」


民たちのその満足気な様子は、ハクリュウもコウリュウも庭園から見上げていた。もちろん黒龍王の生気を浴びながら。兄弟に交わす言葉こそ無かったが、上空で絡み合い必死に儀式を遂行している2頭の姿を見つめ、抱く思いは同じでいるようだった。


王宮の中にいる、ヤヨイやイオリにも生気は光となって届いていた。


「真面目で正直で朗らかな生気ですね、ヤヨイ様。」


「そうね。2人らしい優しい生気だわ。」


二人は顔を見合わせて、クスッと嬉しそうに微笑みあった。
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