竜王様のお約束
儀式を無事終えた上空では、ぐったりした様子のリョクを気遣ってコクリュウが励ましていた。


『リョク様、終わりましたよ。
これからゆっくりと人間の姿に変幻しますから、もう少し頑張って下さい。』


リョクは弾む息を抑えて何とか答える。


『わかっ・・・た・・・』


そんなリョクがいじらしくて、コクリュウは一刻も早くと言わんばかりに、急速に龍の姿を変えていく。そして民たちが囲む庭園の中央へと戻って来た。


光が完全に消えると、初めての儀式に意識を飛ばした妃を抱きかかえ、竜王が姿を現した。


すると誰ともなしに、そこにいた民たちは次々と平伏していくではないか。それはコクリュウが、竜王として民たちに認められたという紛れもない証であった。


「これで一安心ですね、兄上。」


「そうだな。」


ホッと胸をなでおろした二人は頷き合いながら、新竜王を見守る決意を新たにした。


「これで儀式は全て終了しました。
皆さんは各々に解散してください。」


コクリュウの控えめな解散宣言に、民たちは散り散りと満足気な表情のまま家路に着くのであった。
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