H.+ (エイチプラス)
七海の温かさを、もう感じる事は出来ない―・・・。


「泉、・・・おばさんが病院は明日でいいってさ・・・。だから、今日はもう寝ろ・・・」


目を閉じてしまったら、また七海が出てきそうで怖い。

笑顔の可愛い七海じゃなくて、白い肌を血で赤く染めた七海・・・。

つい、裕也が握っていてくれている手に力が篭る。


「・・・俺は此処に居るから大丈夫だ・・・。泉の目が覚めるまで、此処にいる」

「裕也」

「七海だって、心までは死んでない。きっと、泉の傍に居るから・・・」


涙が頬を伝い、髪が頬にピタリとくっついた。

なあ・・・、七海。

人間って、弱いよな・・・。

弱いし、臆病だし、自分勝手だし・・・いい所ないよな。

でもさ、七海。

こんな風に誰かを思って泣ける生き物は、人間だけなんだろう・・・。

七海。

お前の心だけは、死ぬ迄私と一緒だ―・・・。
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