恋の扉をこじあけろ


「開けていいですか?」


「いいですよ」


ドキドキしながら、袋を開けた。


先が小さな歯ブラシと、シンプルなパッケージの、見たことがない歯磨き粉。


歯ブラシはピンク色で、持ち手の下のほうに猫の形の穴が空いていてとても可愛い。

歯磨き粉には英語の文字しか書かれていない。


非売品なのかな。


「口が開かなくて歯が磨きにくいと思うけど、これなら頭が小さいからマシなはずだよ」


確かに。


あんまり口が開かないから奥まで届かなくて磨き辛かったけど、これだったらきちんと歯磨きできそう。


さすが歯医者さん。


「ありがとうございます。たくさん磨きます!」


「磨きすぎはだめだからね」


先生からのプレゼントを抱えて立ち上がると、もう一度お礼を言ってスキップしたいのを我慢して診察室を出た。




どうしよう、うれしすぎる!




袋をきゅっと胸に抱え込んでにやにやする。



まだ、まだ。


やめられないの。






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