恋の扉をこじあけろ
確かに、あのときのわたしと幸宏は修羅場だったけど…
当たり前のような顔をして山菜を口に運ぶ松居先生に、わたしは首を横に振った。
「だからって。普通あんなコンタクトを図りますか?恐怖でしたよ」
いきなり知らない男の人に腕を掴まれて、上から目線で話をされてびっくりしっぱなしだった。
「心配だったんだよ。弟が傷つけた子が元気かどうか」
それにしては気遣いのない登場の仕方だったと思うのは、わたしだけなの?
「失恋なんてよくあることじゃないですか。弟の元カノなんかより、自分が捨てた女性のことを心配したらどうでしょう」
松居先生は片手をひらひらと宙で振った。
「俺はいつもフられるほうだからいいんだよ」
…それはそれでどうなんだろう。
再びフォークを手にとり、ナイフで鶏肉を切り分けにかかった。
なるべく小さく食べやすく。
ひたすら食べるわたしを見て、松居先生はあからさまなため息をついた。
「現に立ち直ってないだろう。恋遊びだなんて、何をやっているんだか」
「……」