恋の扉をこじあけろ
冬実はわたしが泣いている間、何も言わずにわたしの頭を撫でてくれていた。
わたしがやっと落ち着いて離れると、冬実は痺れたと言いながら足を摩って笑った。
「何があったか、話せる?」
「…うん」
そしてぽつりぽつりと、今日の出来事を冬実に話した。
冬実はときどき頷きながら、わたしの話に口を挟まずに全部聞いてくれた。
また泣き出しそうになりながらもすべて話し終えると、冬実はわたしをぎゅっと抱きしめた。
涙腺が緩んでいるせいで、またすぐに涙がでてきてしまった。
「私、的井先生のこと許せない」
冬実は怒りを含んだ声で、わたしを真っ直ぐに見ながら言った。
「今すぐにでも殴りに行きたい。問いただしに行きたい」
冬実の目をじっと見てから、わたしはふるふると首を横に振った。