恋の扉をこじあけろ


「やだ」


わたしがぐずぐず鼻を鳴らしながら涙声でそう言うと、冬実は勇んでいた肩の力をふっと抜いた。


「実はね、今日はこの前言ってた合コンのことで話があって電話したんだけど…。もう、行かないことにしようか?」


急いで首を横に振った。


わたしのために、冬実が次の恋のチャンスを見逃すなんて絶対にいやだ。


冬実がわたしのことを思ってくれるように、わたしだって冬実に早く幸せになってほしい。


「行く。絶対行くから!」


「わかった、わかった。そんなに力まないでよ」


冬実は笑いながらテーブルに手を伸ばし、わたしに箱ごとティッシュをとってくれた。


「先生のこと、忘れよう。ひどい人だよ。いい人、一緒に探そう」


「……」


冬実は真剣に言ってくれた。

だけどわたしはそれに頷けないで、黙ってティッシュを何枚か引き抜いて鼻をかんだ。


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