恋の扉をこじあけろ
ゆかりの前に座っていた男性の声で皆で乾杯をし、すぐに各々おしゃべりを始めた。
美味しそうな料理が次々と運ばれてくる。
「琴乃、あのときは本当にごめん」
サラダに手を伸ばすわたしに、幸宏は頭を下げてきた。
「俺の謝罪を聞いてくれないか」
「謝罪?」
わたしは眉を顰めながら水を飲んだ。
「俺、琴乃のことはちゃんと好きだった。ほんとに好きだったんだよ」
じゃあ、どうして。
あのときわたしじゃなくて、あの子を選んだの?
「あのときはまだコドモで…。自分がかわいかったし、俺はモテるってうぬぼれてた。あの子に琴乃は遊びだって言った時点で…引き返せなくなったんだよ」
確かに、幸宏はプライドが高かった。
わたしにあれは嘘だと謝ることも、わたしに縋ることも、彼のプライドが許さなかったのかもしれない。
だけど、あの子に気持ちが揺らいでいたのも事実なはず。
じゃなきゃ、わたしを利用しているだけだなんてことは言わないだろうから。