恋の扉をこじあけろ

「趣味ってほどじゃないですけど…、プチ登山は好きです」


「プチ登山?」


「はい。本格的な登山はきつそうだからやったことないんですけど、その辺の小さい山にならちょこちょこ登るんです」


運動神経は笑えるくらい全くないけど、たまに気分転換を兼ねて登るのが好き。


「珍しいね。女の子で登山が好きなんて」


そこで先生は削るのをやめて、わたしにもう一度はめてみるように言った。


はめてみると、相変わらずの違和感。


また先生は噛み合わせをみて、わたしに具合を確認した。


「どう?」


「きもひわふいへふ」


「喋れないねー」


先生は笑いながら、わたしの口からスプリントをはずした。

唾液がのびたのを、先生が指でくるっととった。




ああ、



恥ずかしすぎて、息が止まりそうだよ……



< 58 / 278 >

この作品をシェア

pagetop