恋の扉をこじあけろ

わたしがこっそり恥ずかしがっている間に、先生はスプリントを洗って、透明な袋にいれてくれた。


「これを夜、寝るときにつけてね」


こくんと頷きながら、スプリントを受け取った。



手にしてみると、思っていたより小さなスプリント。

わたしのアゴって、こんなに小さいんだ……

わたしっていうか、人のアゴっていうか。


「つけないときは、水の中につけといて。変形したりすることあるから」


水の中に…?


想像して、ちょっと笑ってしまった。

なんか、入れ歯みたい。


「今日はこれで終わりです。ああ、それと」


パソコンでわたしの予約を入れていた先生が、くるりとこちらを向いた。



「あんまり変なものは口にいれないようにね」


「いれませんっ」




< 59 / 278 >

この作品をシェア

pagetop