恋影
だが、白鳴は花街経験がある。不定浪士と呼ばれた肩書きだけの志士など、怖いと思ったことはない。
「その刀をこっちによこしな。俺達がお国のために、しっかりと役立たせてやるよ。アハハハ……!」
周りにいる者達も一緒になって笑い出す。こうやって人を馬鹿にして、刀や物を巻き上げているのだ。
「…………。」
浪士達がさしている刀を見てみると、まだ新調したばかりの物に見える。
「……なら、その刀と交換って言うのはどうですか?」
「なんだと?」
浪士達が近づく前に白鳴が浪士に進み出て、腰にさしてある刀を差し出す。
「これは、この国でもそう滅多にない刀です。あなた方が持っている刀より、遥かに価値がある刀です。」
スラリと刀を鞘から抜く白鳴。刃が太陽の光で輝いている。
「……!」
浪士達はそれを見て、怖じけづいてしまう。
白鳴はそのまま刀を振り下ろし、近くにあった俵を真っ二つに切り裂いた。
浪士達は呆気に取られていて何も言えない。
「……どうです?交換しませんか?」
堂々として浪士達の前に立つ白鳴。
だが、交換したとてこの刀は白鳴にしか扱えない代物だ。すぐに偽物だとバレてしまう。
「……そんな高価な物なら、交換してやるぜ!!」
「!」
立ち上がった浪士が白鳴に近づき、いきなり刀を抜き放つ。
とっさのことで、白鳴は腕に怪我をしてしまう。血がドクドクと溢れ出してくる。
「……!」
「さあ、その刀を大人しく渡しな。俺達がたっぷりと遊んでやるぜ!」
さすがは不定浪士。
卑怯極まりない奴らだ。白鳴はじりじりと追い詰めてくる浪士達を睨みつける。
このままだと本気で危うい。
ここは逃げるしかなさそうだ。白鳴は一気に駆け出した。
「あっ!逃げたぞ!」
「捕まえろ!!」
すかさず浪士達が追い掛けて来る。
すると、何処からともなく手が伸びて来て、白鳴の腕を掴み引き込む。
「!」
どやどやと浪士達が走って行く。
「……た、武市さん……!?」
薄暗い物陰だが、はっきりとその姿が分かる。
「……ずいぶんと捜しましたよ。怪我をしているのなら、早くここを離れたほうがいい。ついて来なさい…!」
「……はい。」
とりあえずその場を離れ、白鳴は着物に広がる赤い染みを押さえながら、武市の後をついて行った。