†captivity†(休載)
「痛むか?」
そう心くんに尋ねられるけれど、自分の状態に気付かないほど痛みなんて感じておらず。
「大丈夫。学校にいるときはまだヒリヒリしてたんですけど、それもすっかりなくなって――」
「そうか」
頬と額にあった心くんの手が、頭の裏と肩に回ってぐっと引き寄せられる。
その力に抗うこともできず、そっと着地したのは彼の膝の上だった。
まぁつまり、また膝枕をしていたのである。
え、なんで急に……?
「心、これ」
戻ってきた東先輩の声の後、先輩から何かを受け取った心くんがそれをあたしの額に当てる。
「冷たい……」
「打撲なら少し冷やした方がいいだろ。少し痣になってる程度だけど一応な」
「……ありがとうございます」
というか、この人東先輩の行動先読みして膝枕していたのだろうか?
ついさっき理解できないとあたしは諦めたばかりなのに?
というか東先輩が氷を持ってきてくれた、だと……?
恐らく、奏多くんに話しかけていたのは氷を用意してもらうため、その後お風呂場からタオルを用意してくれて、氷を受け取って戻ってきたのだろう。
「和歌、大丈夫……?」
そんな心配するかわいらしい声が聞こえる。
奏多くんは目の前で、あたしのあの忘れたい暴走を見てたもんなぁ……。
「大丈夫だよ、心配かけちゃってごめんね」
あーあ、今日は周りに心配かけてばっかりな日だなぁ……。