†captivity†(休載)


あたしの周りには心配してくれる優しい人がたくさんいる。

けれど、同時に自分の情けなさに呆れてしまうんだ。



多分、それはきっと今日だから、今日という日だから特に。

こんな情けない姿を、受け取ってくれる人たちがいるから、いてしまうから……。



あたしは、泣きそうになってしまうんだ。



「……っ」



タオルに包まれた氷に熱を奪われる。

目の上にもかかっていて、溢れてきたその水はタオルに染み込んで、きっと誰にも見られない。



柔らかく、頭を撫でてくれている、彼以外には、きっと。

膝を貸してくれる彼にはきっと、気付かれてしまっているかもしれないけれど、彼はそのことに触れない。



「寝てもいいぜ。俺の上だからな」

「心、さっきまで嫉妬してたくせに、甘えられたら急に機嫌よくなるの?」

「黙って本読んでろ、悟。お前だって俺たちのこと知った瞬間、項垂れて喜んで――」

「喜んでない。黙って」



まって、今のは聞き逃せない。



喜んでたの……?

喜んで……項垂れてたの?



彼の表情は冷たいタオルに隠れて見えなかったけれど、少し声が上ずっていたように聞こえたのは、きっと気のせいではない。
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